理系の学生ならば、英語で論文を書く機会があるでしょう。さらに研究開発の仕事に従事すれば社会人になってからも英語で論文を書くこともあるかもしれません。
また理系と文系のいずれでも、仕事に関することで報告書を英語で書かなければならない人もいらっしゃいます。
急に論文や報告書を英語で書くことになり、上手く書けなくて困る人も案外多いです。
これまで私自身も何度も論文や報告書を英語で書いてきましたし、多くの人に書き方をアドバイスしてきましたので、以下に基本的な方法について紹介します!
*英語で論文・報告書を書くための基本を一通り理解するには、書き方に関する良い本を読む方が効率良いです!
英語の論文・報告書が上手く書けない原因は?
もし英語の論文や報告書が上手く書けないならば、「なぜ上手く書けないのか?」を考え、その原因を把握しましょう。一般的には主に以下の2つの理由が考えられます。
1.論文や報告書に書くべき内容が決められてなく、整理されていない
2.書くべき内容を英語で表現できない
これらの原因に対してやるべきことが異なりますので、まずは書けない原因を把握しないと前に進めません。
あまり英語で論文や報告書を書いた経験が無い方の場合、上記2つの原因の両方に該当することがほとんどです。そんな場合は順番に解決していきましょう!
まず母国語(日本語が母国語ならば日本語)で論文・報告書を書きましょう。そもそも母国語で書けないものを、苦手な英語で書けないでしょう。
「英語は英語らしい表現があるので、母国語で書いてから英訳するのではなく、最初から英語で書くべきだ!」という指摘も何度もされました。
確かに語順や1つのパラグラフの中のセンテンスの順序などで、日本語と英語では違いがあるものも多いです。しかし、本当に英語で論文や報告書が上手く書けないという方々を多数サポートしてきた経験上、英語で上手く書けない人に「最初から英語で書いた方が良い」とアドバイスしても問題が解決しないことが多いです。
実際、まず日本語で書いてから英訳するということを数回経験すると、前述のような英語と日本語の語順・センテンスの順序の違いについては徐々に理解できるようになり、最初に書く日本語も、その後英訳することを意識した日本語に調節することができるようになります。
語学力としては、当然のことながら苦手な英語よりも日本語(母国語)の方が断然上ですので、得意な方で調整できるということです。
論文や報告書では、自分が専門とするジャンル(テーマ)について複数回書くことが多いので、一度作った英語の文章を繰り返し他の文書でも使用できる場合があります。そんな時には、その部分だけ日本語を作らずに最初からその英文を当てはめて作るなどの効率化を図っても良いでしょう。
以上のようにまずは母国語で論文・報告書を書くことができたら、焦らずにじっくり見直し、推敲します。
本当に優れた論文・報告書であれば、1つ1つの言葉が吟味されていますし、1つ1つの文も無駄がなく、論理的につながり、論旨明瞭な文章になっています。そのような文章になっているのか、ここでよく確認し、修正すべきは修正した方が良いです。
英訳した後は、当然のことながら英語ですので読んで推敲することも大変になるからです。そうすると母国語ならば気がつくことができた微妙な間違いなどを見つけ出すことができなくなってしまう可能性が高くなります。
またよくあるのは、上手く英訳できなかった文をよく見てみたら日本語の文がおかしかったというパターンです。母国語で読んでもよく分からない文を英訳することは不可能に近いです。
まずはしっかり日本語(母国語)で書いて、内容に不安が無い状態に完成させてから、じっくり英訳しましょう。
これら2つのプロセスについて、以下でさらに詳しく解説します。
日本語で論文・報告書を書く
日本語(母国語)で論文・報告書を書くことが、そもそも難しいこともあります。英語力が高い人ならば、日本語でしっかり書かれた文章があるならば、英語で書くということは単純に英訳するだけの作業に過ぎません(*プロの翻訳家でなければできないような英訳のレベルではなく、一般的なレベルの文書の場合です)。
英語そのものよりも、内容が重要なのです。ネイティブではない我々は、まずは内容が正確に伝えられるレベルの英語を目指しましょう。
論文の構成
論文であれば、その内容が本来重要で、例えばノーベル賞の受賞理由になるような論文ならばその論文で初めて報告される内容がもっとも重要です。
論文の内容は、実験やシミュレーションなどの研究内容に直結したものですので、その内容を充実させようとすると追加実験や再実験が必要になることもあります。
結果を整理して考察し、結論を導くことについては、特に専門知識や研究者としての能力が問われますので、論文の命とも言えます。
これらを論理的で明瞭な文章で書き表すということは、慣れないとそれなりに大変です。しかし、論文の構成というものを理解すれば、格段に書きやすくなります。論文の構成とは以下のようなものです。
Introduction(背景・目的)
ExperimentalあるいはMethod(実験方法あるいは方法)
Results(結果)
Discussion(考察)
Conclusions(結論)
投稿する論文誌によって、Results and Discussionとなっていたり、多少の違いがある場合がありますので、投稿する論文誌の指定するフォーマットに合わせましょう。
上記のカッコ内に日本語で記しましたように、書く部分で記載すべき内容が決まっていますし、それらの部分での文章の時制も決まっています。
これらをしっかり理解してから書き始めれば、迷わずに書けるようになるでしょう。
報告書の構成
論文に比べると、報告書を書く機会の方がほとんどの人にとって圧倒的に多いでしょう。報告書はどのような時に書くものなのか、どのような組織で必要としているのかによって非常に多くのものがありますので、一言で書き方を説明するのは難しいです。
報告書の提出が求められている場合は、通常は定められたフォーマット(書式)がありますので、そのフォーマットに合わせて書くべきことを簡潔かつ論理的に書くことが基本です。
特に報告書のフォーマットが無く、自由書式で書く場合は、できるだけ簡潔かつ論理的に書くこと、冒頭に「概要」などとして重要な結論を書くことなどがポイントです。
一般的に文章が長くなるほど全てを読んでもらえる可能性は低くなります。さらに簡潔かつ論理的でなければ、意味が伝わりにくく、ますます読んでもらえないでしょう。
そのため、冒頭で重要なことを簡潔かつ論理的に伝え、相手の興味を引き、さらに読んでもらえるように誘導しなければなりません。
報告書は、その名の通り、その内容を相手に報告するためのものです。読んでもらえなければ意味がありません。
反対に、非常に重要なことを相手に伝えることで、物事が前に進み、その結果として最終的には大きな成果につながることがあります。
それだけ内容が重要ですので、まずは構成からしっかり考えて母国語で書きましょう。
論文・報告書を英訳する
翻訳機に頼りすぎない
前述のように母国語で論文・報告書をしっかり作成できたら、それを丁寧に英訳しましょう。
その時に絶対に止めた方が良いのが、翻訳機に頼り過ぎることです。
私がこれまでに英語の論文の書き方指導したことがある人の中で、数人だけ翻訳機を使って英訳させた文章を提出してきた人がいます。
最近のこれらの翻訳のレベルは、年々進歩していますので、ある程度は役に立ちます。特に全くわからない外国語の意味を知りたい時などは頼りになります。
しかし、残念ながら英訳させたものをそのまま論文や報告書で使えるレベルではありません。そのため、翻訳機などで英訳させただけの論文を読まされればすぐに分かります。
そして自分で努力して英訳し、それを見せて指導を受けようとしているのではなく、翻訳機のチェックをさせていることになりますので、誰かに見てもらうのであれば極めて失礼です。
またそのような翻訳機に頼りすぎてしまうと、結局は自分の英語力は向上しません。焦らず基本的な英語力を磨きましょう。
英語の論文の書き方を学ぶ
論文の場合、非常に論理的な文章です。「論文調」などとも言われるように論文的な英語表現があります。これが翻訳機で使うとすぐにわかる原因の1つでもあります。論文的な英語表現の多くは、ビジネスでの報告書などでも通用するものです。
これらの論文によく使う英語表現を学ぶには、英語論文の書き方をまとめた本を読む方法がもっとも効率良いです。
また特定の分野の英語の専門用語も必要になることが多いです。それらは論文や専門書およびその分野について書かれた何らかの文書を読むことで学ぶのが普通の方法です。
地道に取り組むことで、自分の中に英文のストックが蓄積してくるので、やればやるほど英訳が楽になるでしょう。
ネイティブチェックを受ける
英語論文の場合は、通常はいずれかの論文誌に投稿し、最終的に受理されれば出版され、公の文書としてほぼ永遠に残ります。
研究開発では、その論文を執筆するまでに多額の研究開発費がかけられており、その成果をまとめたものが論文です。
このように考えれば、予算的に可能であれば英訳をした後の文章をネイティブにチェックしてもらうことをオススメします。英訳のミスで内容が正しく伝わらなくなっているとすべてが台無しになってしまいますし、万が一間違った英文のまま出版してしまうと、そのまま永遠に残ってしまいます。
重要な文書については、やはりネイティブチェックを受けた方が安心できます。
英語が苦手な人のためのリスニング上達法についてこちらの記事で紹介しています。
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